不登校

小学校、中学校の留年制度・原級留置、不登校でも進級・卒業できるの?

日本の義務教育における留年制度

留年制度のことを、正式には原級留置といいます。原級留置とは児童・生徒が長期欠席等の理由で進級せずに次年度も同じ学年で履修することです。

日本の義務教育における原級留置の実情

日本では児童・生徒の成績不良を理由に学校長の判断で原級留置させることは可能です。そのため学年末には教職員全体で「進級判定会議」「卒業判定会議」を行っています。特に年間30日以上欠席した生徒を会議の対象としている場合が多く、会議の中では、児童・生徒本人と保護者の進級の意思確認が行われ、ほぼすべてのケースで進級が認定されます。ですので、不登校で1日も学校に通わなかったとしても、中学校卒業となっています。

児童・生徒本人や保護者が諸事情により、原級留置を希望した場合ですが、学校や教育委員会、関係諸機関から説得される、または認められず進級とっています。

1993年に原級留置希望が認められずに裁判に発展したケースがあります。

経緯

神戸市立菅の台小学校に在籍していた5年生の女子児童が、いじめなどの理由により長期欠席となった。登校したのは71日で、うち37日が会議室での自習であり、教室に出席したのは34日だけであった。出席日数の不足を理由に、児童と父親は「留年にしてほしい」と希望したが、校長は成績を考慮して拒否し、強制的に6年に進級させた。本人、または親はそれを不満とし、1993年5月に神戸地方裁判所に訴え出た。

引用元:Wikipedia

判決

1993年8月30日に神戸地方裁判所で、以下の要旨に基づき、学校側が進級を決定したことを正当化し、原告側の敗訴とする判決を下した。

  • 小学校段階では年齢により、体格・精神年齢・運動能力に顕著な差があり、1年遅れると次年度の児童の間に溶け込むのに大変な努力が必要になるし、社会的な違和感に耐える必要という著しい不利益を被ることを考慮すべきである。
  • 一般的に義務教育では年齢主義的な学年制の運用がされているが、特に初等普通教育においては「心身の発達に応じて」教育を施すことを目的としており、小学校の段階では年齢により、精神年齢・運動能力・体格等心身の発達に顕著な開きがあることから、年齢別の教育が最も適するといえる。
  • 同じ社会生活・日常生活上の経験を有する、同年齢の児童ごとに教育することが最も適していると解せられる。

引用元:Wikipedia

結果は学校側の勝訴でした。

つまり、児童・生徒本人や保護者が原級留置希望でも、校長が認めなければ進級となるのです。原級留置自体が日本ではごく稀なケースなので校長も認めることは容易ではないようです。

ちなみに、アメリカでは、小学校(初等教育)で10人に1人程度、中学校(中等教育)で20人に1人程度が留年を経験しているようです。

まとめ

制度の上では、長期欠席や成績不良などにより、満足に授業が受けられていない児童・生徒に対して校長の判断で進級させずに原級留置をすることが可能ですが、実際には、原級留置になることはほぼありません

本人や保護者が原級留置を希望したとしても、司法の場でも認められていないことから、日本では年齢を重ねるとともに学校も進級・卒業となり、義務教育課程修了とみなされています。

また、学年末に教職員全体で「進級判定会議」「卒業判定会議」を行うといった形式的な会議は無くしていった方がいいでしょう。

原級留置といった制度はあるのに、実際は適用されておらず、形式的な会議のみが行われている現状の見直しか、あるいはアメリカ等の諸外国のように原級留置を適用していき、国民全員に基礎的な学力を求め、学力の底上げを図っていくのか、どちらにせよ制度の見直しが必要でしょう。