算数障がいとは
症状
学習障がいとは、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」といった学習に必要な基礎的な能力のうち、一つないし複数の特定の能力についてなかなか習得できなかったり、うまく発揮することができなかったりすることによって、学習上、様々な困難に直面している状態です。
算数障がい(ディスカリキュリア)とは、学習障がい(LD)の一種で、計算や推論が困難な症状を指します。知的発達、対人コミュニケーションなどには問題がなく、算数だけに著しく困難を示す場合は算数障がいの可能性があります。読みの困難と同時に生じることが多いですが、読みの困難がないにも関わらず、計算や推論の困難のみが生じる場合もあります。またADHDとの合併も知られています。
算数障がいの具体的な症状例
- 数を数えられない。
- 数え間違いが多い。
- 数の大小が分からない
- 簡単な計算問題が解けない
- 計算間違いが多い
- 計算が非常に遅い
- 九九が覚えられない
- 単位が分からない
- 図形が理解できない
- 立体が頭の中で想像できない
- 文章問題で何を問われているのか分からない
- 自分で計算式を立てられない
- +,-,×,÷の意味を理解できない
- 数の規則性を理解できない
- 問題から解答までのプロセスを思考するのではなく暗記しようとする
出現率
算数障がいのある子どもは、15人~20人に1人の割合でいると言われています。つまり、クラスに2人程度はいることになります。これは読み障がいと同じ程度存在していると言われています。また、日本だけでなく言語の違う世界中の国々でも同程度存在していると考えられています。
原因
原因はまだ十分に特定されていません。しかし、算数にのみ困難を示す子どもの場合は、数量の処理に困難のあることが分かっています。数量の処理の困難は計算、単位、時間の把握など算数の様々な学習に影響すると考えられています。

算数障がいの疑いがある子どもへの対処法
保護者が出来る対処
子どもに算数障がいの疑いがある場合は、早めに対処してください。早期に受診し、あてはまる症状に合った適切なサポートをしていくことで将来の生きづらさを軽減することに繋がります。
専門機関を受診する
発達障がいを専門に扱っている医療機関を受診しましょう。子ども症状に合った適切なサポートを早期からしていくことが大事です。
知能検査を受ける
知能検査を受けることをおすすめします。
ウェクスラー知能検査(WAIS‐Ⅳ・WISC‐Ⅳ)を受けることで総合的なIQ、言語理解指標(VCI)、知覚推理指標(PRI)、ワーキングメモリー指標(WMI)、処理速度指標(PSI)の数値が算出され、実際に算数が苦手なのかどうか、算数障がいの可能性があるかどうかを客観的に判断することができます。

学校の先生が出来る対処
算数障がいへの理解を深める
本やネットで算数障がいについて学び、算数障がいへの正しい知識を身につけましょう。
算数障がいを抱えている場合、頑張って勉強からといって計算が速くなったり文章問題がスラスラと解けるようになるわけではありません。脳機能の障がいが原因であるため、ある程度、計算や文章問題に慣れて改善されることはあっても、他の子と同じように向上していくことは困難でしょう。
そういった特性を理解せず、周囲から「勉強不足」「もっと勉強をしなさい」などと叱られたり、友達から馬鹿にされたりすると、新たに精神的な問題を抱えることがあります。
このような発達障害の特性による生きづらさや困難が原因で、うつや不安などの症状を発症することを二次障がいと呼び、進行すると新たな治療が必要になるため注意が必要です。
出来ることをたくさん褒める
算数障がいを抱える子どもは友達にからかわれたり、自信を失いやすかったりします。
それを防ぐため、クラスで子どもの居場所を作ってあげ、子どもの出来ている点に目を向けて、たくさん褒めてあげるようにしましょう。
自信を失わずに勉強を進めることができれば、算数の苦手意識に対しても軽減することができます。
算数障がいへの理解を深めるためのおススメの本

著者 | 宮本 信也 |
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略歴 | 白百合女子大学人間総合学部発達心理学科教授。医学博士・小児科医。1978年金沢大学医学部卒業、1978~1991年自治医科大学小児科研修医、助手、講師を経て、1991~1998年筑波大学人間系助教授、1998~2018年同教授、2018年より現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) |

著者 | 熊谷 恵子 |
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略歴 | 筑波大学人間系教授。博士(教育学)東京出身。九州大学理学部化学科卒業、理系の仕事を経て、筑波大学大学院修士課程教育研究科障害児教育専攻修了、筑波大学大学院博士課程心身障害学研究科単位取得退学、その後、筑波大学助手、講師、助教授、准教授を経て現職。言語聴覚士、臨床心理士、学校心理士スーパーバイザー、特別支援教育士スーパーバイザー。発達障害のある人の支援に関わる研究を専門としている。 |

著者 | 品川 裕香 |
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略歴 | 教育ジャーナリスト。北海道大学大学院教育学研究院付属子ども発達臨床研究センター学外研究員。京都市教育委員会支援の必要な子どもプロジェクトチーム専門委員。前文部科学省中央教育審議会特別支援教育の在り方に関する特別委員会専門委員。元内閣教育再生会議委員。教育・医療・社会問題を異文化理解・予防的観点から取材執筆。国内外の教育現場(いじめ・不登校・虐待からLD・ADHD・アスペルガー症候群など特別支援教育、非行など矯正教育まで)、子ども・保護者・教師・支援者たちの思いを多角的に取材執筆(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) |